登録要件等(抜粋)

これが全てではありませんが、出願の可否を検討する上で参考になると思います。

特 許 権

保護対象

  • 発明(自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの)
    • (1)物の発明(プログラムを含む)
    • (2)方法の発明

登録要件

(1)産業上利用できること(可能性で足りる)

→人間の手術・治療・診断方法はNG→業として利用できないものはNG(例:喫煙方法)

→実施不可能なものはNG(例:地球を紫外線吸収膜で覆ったオゾン層破壊防止機構)

(2)新規性があること(出願時を基準とし、時分を問題とする)

→世界主義であり、外国も対象となる

→公然知られた発明はNG

※「公然」:秘密を脱した状態(不特定人が知れば公然)

※「知られ」:現実に知られたこと、技術的に理解されたこと

→公用発明はNG

※不特定人が知られ得る状態で実施された場合である(例:公開実験、実演販売)

→刊行物に記載された発明はNG

※「刊行物」:頒布による公開を目的とした複製物で情報性があるもの

※「頒布」:刊行物が不特定多数の者が見得る状態に置かれること

※「記載された発明」:記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される発明

→電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明はNG

※「電気通信回線」:双方向に通信可能な電気通信手段

※「公衆に利用可能となった」:不特定多数の者にアクセス可能状態に置かれること

(3)進歩性があること(出願時を基準とし、時分を問題とする)

→その発明の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)の視点を基準とする

→引用発明(従来技術)に基づいて、当業者が出願に係る発明に容易に想到できたことの論理付けによって判断する

※論理付けができた場合は進歩性が否定され、できなければ肯定される

※引用発明(従来技術)からの最適材料の選択、設計変更、単なる寄せ集めに該当する場合は進歩性が否定されやすい

次は実用新案権です。

実 用 新 案 権

保護対象

アイデア、考案などを形にする実用新案権の登録要件
  • 考案(自然法則利用した技術的思想の創作)
    • 物品の形状、構造又は組合せに係る考案(プログラム、方法は除外)

登録要件

(1)考案であること

(2)公序良俗等に反するものでないこと

(3)考案の単一性を有すること(異なる主旨の考案を同時に複数権利化しないこと)

(4)出願書類の体をなしていること(説明記載なしや、著しく不明確でないこと)

実用新案は上記を満たすことで登録を受け得ますが、実態審査(新規性等)を受けずに登録されることから権利行使等の際には実用新案技術評価請求(特許で言えば出願審査請求のような意味合い)を行い肯定的な評価を得る必要があります。 

評価においては、以下のような潜在的な要件を満たしていることが必要になります。 

潜在的要件

(1)産業上利用できること(特許に準ずる)

(2)新規性があること(特許に準ずる)

(3)進歩性があること(特許に準ずるが、特許よりも若干ハードルが低い) 

次は意匠権です。

意 匠 権

保護対象

物品の形をデザインとして保護する意匠権の登録要件
  • 意匠(物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの)
    • (1)物品事態のデザイン
    • (2)物品の部分に係るデザイン

登録要件

(1)意匠であること

(2)工業上利用できること(可能性で足りる)

→工業的技術を利用して同一物を反復して多量に生産し得ること

※純粋美術の分野に属する著作物はNG

但し、応用美術については可能性が残る

※自然物を意匠の主たる要素として使用したものはNG

(例:加工していない自然石をそのまま置物としたもの)

※不動産はNG

(3)新規性があること(出願時を基準とし、時分を問題とする)

→世界主義であり、外国も対象となる

→公然知られた意匠はNG

※「公然」:秘密を脱した状態(不特定人が知れば公然)

※「知られ」:現実に知られたこと

→刊行物に記載された意匠はNG

※「刊行物」:頒布による公開を目的とした複製物で情報性があるもの

※「頒布」:刊行物が不特定多数の者が見得る状態に置かれること

※「記載された意匠」:記載されている事項及び記載されているに等しい事項から把握される意匠 

→電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠はNG

※「電気通信回線」:双方向に通信可能な電気通信手段

※「公衆に利用可能となった」:不特定多数の者にアクセス可能状態に置かれること

(4)創作非容易性があること(出願時を基準とし、時分を問題とする)

→その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)の視点を基準とする

※「容易に創作できた」ケースとして、置換、寄せ集め、配置変更、構成比率の変更、連続する単位数の増減、ほとんどそのまま表したに過ぎない意匠、商慣行上の転用がある 

次は商標権です。

商 標 権

保護対象

ネーミングやロゴなどの識別マークを商標権で保護するための登録要件
  • 商標(人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの)であって、自らが取り扱う商品、又はサービス(役務)について使用をするもの。
    • (1)商品に使用する商標
    • (2)役務に使用する商標

登録要件

(1)標章であること(「標章」:商標の使用という概念を除いた標識部分)

→視覚または聴覚に訴えるものであること

(2)識別力があること

→以下は識別力がないとされNG

※単にその商品等の普通名称を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないもの

(例:商品「時計」に対して「時計」の商標)

(「普通名称」には俗称等も含まれる 例:アルミ(アルミニウム))

(文字を図案化すること登録を受け得る可能性はある)

※その商品等について慣用されているもの

(例:商品「清酒」に対して「正宗」の商標)

※単にその商品等の産地や品質等を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないもの

(例:商品に対して「一級」「一番」「良く効く」「やわらか」等

 例:商品「トマト」に対して「レッド」の商品)

(真偽に関わらずNG 例:鹿児島県産の商品に「北海道」の商標)

(原則、本商標(記述的商標)を2つ以上並べてもNG 

 例:商品「野球バット」に対して「スーパーヒット」の商標)

※単にありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないもの

(「氏名」:50音別電話帳で多数発見できるものは対象となる)

(「名称」:商号を含む概念である 例:田中製作所)

(文字を図案化することで登録を受け得る可能性はある)

※きわめて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからかなるもの

(例:「M」、「○」)

→上記に該当しても、長年の使用により著名性(全国周知)を得れば登録OK

※上記以外で自他商品等の識別力を有さないもの

(3)先登録商標がないこと等(細かい登録要件がある 商標法4条等)